会社員は毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末に会社が「年末調整」で1年分の税額を精算してくれます。しかし、年の途中で退職し、その年のうちに再就職しなかった場合は年末調整が行われません。その結果、給与から天引きされていた所得税が本来の税額より多く引かれたままになっているケースが多く、自分で確定申告(還付申告)をしないと戻ってきません。
この記事では、退職後の確定申告が必要になる理由と対象者、2025年分(令和7年分)から適用される税制改正のポイント、必要書類・申告期限までを解説します。
なぜ退職後は確定申告(還付申告)が必要になるのか
毎月の給与から天引きされる所得税(源泉徴収税額)は、「1年間その給与水準で働き続ける」という前提で概算計算されています。年の途中で退職すると、実際の年間所得は当初の見込みより少なくなるため、源泉徴収された税額が本来の税額より多くなっている(=払いすぎている)ことがほとんどです。
本来はこの過不足を年末調整で精算しますが、退職者は年末調整の対象外になるため、代わりに確定申告で精算する必要があります。これを一般に「還付申告」と呼びます。
確定申告(還付申告)が必要になる人・不要な人
必要になりやすい人
- 年の途中で退職し、同じ年内に再就職しなかった(年末調整を受けていない)
- 退職後、国民健康保険料・国民年金保険料を自分で支払った(社会保険料控除が増える)
- 医療費控除・寄付金控除(ふるさと納税など)・生命保険料控除などを追加で受けたい
不要なケース
- 退職後、同じ年のうちに再就職し、新しい勤務先で年末調整を受けた(前職の源泉徴収票を提出していれば通算で精算される)
還付申告は義務ではなく任意の手続きです。ただし、申告しなければ払いすぎた税金は戻ってこないため、対象になりそうな人は申告しておくのが基本的に得策です。
2025年分(令和7年分)から変わった税制改正のポイント
令和7年度の税制改正により、2025年分(2026年に提出する分)の確定申告から、基礎控除と給与所得控除が拡大されています。退職者にとっても還付額に影響する重要な変更です。
基礎控除が所得に応じて最大95万円に
基礎控除は、これまで所得にかかわらず一律48万円でしたが、2025年分・2026年分は合計所得金額に応じた段階制に変わりました(2027年分からは58万円に一本化される時限的な措置です)。
| 合計所得金額 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 88万円 |
| 336万円超489万円以下 | 68万円 |
| 489万円超655万円以下 | 63万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 58万円 |
退職した年は給与所得が減る人が多いため、この控除額拡大の恩恵を受けやすくなっています。
給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げ
給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられました。給与収入が162万5,000円以下の場合、給与所得控除額は一律65万円になります。基礎控除の拡大とあわせて、給与所得者・退職者ともに課税対象となる所得(課税所得)が小さくなる方向の改正です。
申告期限|通常の確定申告と還付申告は違う
通常の確定申告(納税が必要な場合)の期間は、対象年の翌年2月16日から3月15日までです。
一方、税金が戻ってくる「還付申告」は、この期間に縛られません。対象となる年の翌年1月1日から5年間、いつでも提出できます。「確定申告の時期を逃してしまった」という場合でも、還付申告であれば焦る必要はありません。
必要書類
- 給与所得の源泉徴収票(退職した勤務先から発行される)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証等)
- 国民年金・国民健康保険料の支払い証明(社会保険料控除の適用を受ける場合)
- 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書(該当する場合)
- 医療費控除の明細書(医療費控除を受ける場合)
- 還付金の振込先口座がわかるもの
源泉徴収票は退職後しばらくして郵送されてくることが多いですが、届かない場合は退職した会社の総務・人事担当へ問い合わせましょう。
申告方法
- e-Tax(オンライン申告):国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成し、マイナンバーカード+スマホ(またはICカードリーダー)で電子送信。自宅で完結し、還付も比較的早い
- 税務署へ持参・郵送:作成コーナーで印刷した書類、または手書きの申告書を提出
初めての確定申告でも、国税庁の確定申告書等作成コーナーは源泉徴収票の内容を入力していく形式で、比較的迷わず進められます。
退職金にも税金がかかる?「退職所得の受給に関する申告書」の重要性
退職金を受け取る際、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金にかかる所得税は退職金の支払い時に適切に源泉徴収され、原則としてそのまま課税関係が完結します(確定申告不要)。
一方、この申告書を提出していない場合は、退職金の額にかかわらず一律20.42%の税率で源泉徴収されるため、多くの場合は納めすぎになります。この場合は確定申告をすることで正しい税額に精算され、還付を受けられる可能性があります。退職時に提出したかどうか不安な場合は、退職金の源泉徴収票を確認するか、勤務先に確認しておきましょう。
よくある質問
確定申告をしないとどうなりますか?
還付申告は義務ではないため、罰則はありません。ただし、申告しなければ払いすぎた所得税は戻ってきません。還付申告は翌年1月1日から5年間提出できるので、退職した年に忘れても後から申告することは可能です。
源泉徴収票をなくしてしまいました。どうすればいいですか?
退職した会社の総務・人事部門に再発行を依頼してください。会社に連絡が取りづらい場合は、所轄の税務署に相談すると対応方法を案内してもらえます。
年の途中で再就職した場合も確定申告は必要ですか?
同じ年のうちに再就職し、前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出していれば、通常は新しい勤務先の年末調整で精算されるため確定申告は不要です。ただし、医療費控除やふるさと納税(ワンストップ特例を使わない場合)など、年末調整では対応できない控除を受けたい場合は、確定申告が必要になります。
まとめ
- 年の途中で退職し、年内に再就職しなかった人は年末調整を受けられないため、確定申告(還付申告)で税金の精算が必要
- 2025年分から基礎控除が最大95万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に拡大(時限措置)
- 還付申告は通常の確定申告期間に縛られず、翌年1月1日から5年間いつでも提出可能
- 退職金は「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無で課税の扱いが変わるので要確認
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